新創監査法人

公認会計士であり、新進気鋭の経営者でもある須原伸太郎さんが主宰するコンサルティングファームの株式会社エスネットワークスと新創監査法人は、2016年9月、人財交流プロジェクトを発足。以来、お互いのスタッフを出向させて監査法人の持つスキルとエスネットワークスのコンサルティングのノウハウをぶつけ、昇華させる取り組みを行なっています。同社の須原伸太郎社長、下村雄一郎執行役員と当法人の柳澤義一統括社員がその狙いについて対談しました。

須原伸太郎
株式会社エスネットワークス
代表取締役社長
一橋大学経済学部卒業。有限責任監査法人トーマツ入所後、株式会社マッキャンエリクソンにて企業のブランド戦略立案及びマーケティングプランニングに従事。1999年株式会社エスネットワークスを設立。ベンチャー企業とローカル企業にCFO機能を提供しながら、エスネットワークスグループからもCFOを輩出すべく、日々奮闘中。
下村雄一郎
株式会社エスネットワークス
執行役員
明治大学法学部卒業。2004年に会計士試験に合格し、株式会社エスネットワークスに入社。上場/未上場 の決算業務や業務効率化の支援に従事し、2008年に関西支社長に就任。現在は執行役員、マーケティング本部長を兼務。最近は主に、永続・発展をテーマに「事業承継」や 「アライアンス」を軸に活動中。
柳澤義一
新創監査法人統括代表社員、日本公認会計士協会副会長
交換人材の選び方
柳澤
須原さんと初めてお会いしたのは、日本公認会計士協会が50周年事業を行うとき協力いただいた広告代理店に勤務しておられたときですね。当時、広告代理店に会計士がいるとみんな驚いていました。
須原
90年代の終わりですね。会計士だとは言わずに代理店に勤めていたのですが、どこからかそういう話になってアサインされまして(笑)。それから約20年間、いろいろご相談させていただく中で、今回の人財交流もお話しさせていただきました。私たちはコンサルティング会社ですから、メンバーは企業内会計士としてコンサルティングの世界に入り監査をしたことがありません。会計士になったからには一度はやってみたいという声が多かったので、これを解決するために、先生にご相談した次第です。おかげさまで、今回の人財交流は弊社の採用にとっても大きなメリットでした。
柳澤
会計士試験合格者は、一度は監査をやってみたいとやはり思うでしょうね。
下村
でも実は、弊社から出向したメンバーは、当初「行きたくない」と言っていたんです。「弊社に入社するにあたり監査をしないものと決めていたので、監査をと言われても心がすっきりしません」と。でも、それが今では「本当に行って良かった。監査のチェックの仕方や業務の標準化の仕方がすごく勉強になった」と言っています。
柳澤
手を挙げるといつでも監査法人に行けるパイプがあるのは、メンバーの安心感にもなりますよね。逆に私どもからすると、監査経験しかないのは、ある意味、外の世界を知らないことになりますので、2〜3年のコンサルテイング経験で会計士としての幅を広げたい。だから、コンサルティングファームに行ける環境は重要です。でもそうは言っても、監査現場を離れてコンサルティングの現場に出るのはとても勇気がいります。自分がどうなるのかが見えないですからね。実際、コンサルティングに行ったメンバーは一皮向けたと思います。
須原
新創監査法人さんから来ていただいた方には、弊社の中でも新規事業を担当していただきました。新規事業は想定外のことがたくさん起こりますが、そんなとき弊社のメンバーに「落ち着け」と諭してくれていましたよ。
柳澤
仕切りたいところがあるんですよね。監査の仕事はルーティン的に手続きが組まれていて、なかなか自分の仕切りは出せないですから。それに監査はチェックリストを埋めれば形ができてしまう。クリエイティビティのある人にはフラストレーションが溜まりやすいのです。だから、彼は出向したほうが良いと感じていました。
それと今回良かったのは須原さんの提案です。「なんでもありでいきましょう。ダメならキャンセルもありで、ごめんなさいで済ませましょう」と言っていただき、私もまったく同意見でした。トレードする人材の力がイコールである必要はなくて、それぞれの考えで出したい人を出すという方法が良かったと思います。
須原
そう言っていただけるとありがたいです。なんでもありでできたのは、先生と20年来のお付き合いを続けてきた信頼関係があってのことだと思います。
こころの動きを引き出す演出
須原
弊社のメンバーは先生から見て何が強みでしたか?
柳澤
真面目な部分と押しの強い部分の両方を持っているタイプだと思います。現場に入るとかなり粘着性があって、昔風に言えば根性がある。これはとても大事で、押しが強いだけだと周りが反発するし、真面目なだけだと折れてしまう。でもこの両面を持っているので、非常に適応力が高いです。
下村
正直、誰がいいのか悩んだんです。悩んだ末、先生に言っていただいたような腰の強そうな、むしろ監査が嫌いではないかというメンバーを選びました。
柳澤
監査の面白さは1年や2年では分からないのですが、自分が深掘りしようと思うところは、いくらでも突っ込みどころが満載ですから、やはり腰の強さは絶対に必要です。そういう面においては短い時間でしたけど、経験していただけたかなと思います。
うちが受け入れるタイプとしては、まだそれほど経験のない若手で、真っ白な状態でものが見られる人がベスト。ボール磨きができるくらいの人ですね。一方で、エスネットワークスさんに出すのは、すぐに代打で出番がありますから、ある程度の即戦力でないと使えないだろうと考えました。そこは人財交流の難しさですけど、今回はお互いがちょうどいいタイプがはまりましたね。
会計人材の活かし方、育て方
須原
公職としての先生のご意見を伺いたいのですが、最近、会計士の魅力が落ち始めていると感じています。会計士=AIに代替される説もある中で、数字のリテラシーを持った人を、もっとこの業界に引き込むにはどうすれば良いとお考えですか。
柳澤
それは私たち公認会計士協会も悩んでいます。本当は会計リテラシーを持っている人こそが経営者にもなれると思うんです。私が協会で採用推進の担当をやっていたときは、上場企業に対して会計士を経理部に入れる必要はありませんと言っていました。
会計士は数字と傾向と対策に強いですから、営業でもなんでもできるわけです。そういう認識で会計士を採用していただければ、会社を支えてくれているのは会計リテラシーを持っている人だと経営者が感じるケースが増えて、会計士に対するリスペクトも高まっていくと思います。会計士=経営がわかる人と世間に理解されれば、なりたいと思う人も増えてくるはずですよね。
だから、須原さんのような会計士でありながら起業している人やクリエイティビティの高い世界で活躍する会計士が増えてくるといいですね。監査をひとつのキャリアパスとして、いろんな世界に展開する人が増えていることをアピールしていきたいです。
須原
私は専門学校の意識も変えてほしいとずっと思っていまして、専門学校は会計士受験者を集めるときに必ず「監査法人説明会」と銘打つんです。つまり合格=監査法人と、キャリアパスがひとつしかないように見えてしまう。
たとえば「大企業の企業内会計士説明会」と銘打って、上場企業が説明会を開き、それとは別に、私たちのようなコンサルティングファームも集まって説明会を開く。そうすれば、結果的に彼らが監査法人を選んだとしても、パスがいくつもあることを認識していただけると思うんです。
下村
私たちからも専門学校に提案していまして、ようやく変わりはじめて来ました。
柳澤
これは須原さんたちと一緒に研究したいのですが、現状として試験合格者のほぼ100%が監査法人へ入って、10年以内に約7割が辞めています。この現象に対して、どういうキャリアパスがあるべきかを考えないといけないと思います。
私の構想をご紹介すると、会計士になる道筋は医学部と同じ6年教育だと思っています。4年間の学部と2年間の大学院で教育を行い、その修了者だけが試験を受けられる。合格したら研修生という形で監査法人に2年間勤務し、そこで臨床教育を行う。その後に就職先を決めるという仕組みです。トータル8年間の教育を受ければ次が見えやすく、コンサルティングファームか一般企業か監査法人か、本人の意志で動けると思います。
私がさらにもう一石投じたいのは、監査現場に合格者だけを使う必要はないということです。全部合格者で固めようとするから頭数だけになってしまい、教育が疎かになってしまう。資格のない人でも監査現場に入れるように構造自体を見直すべきだと思っています。私はこの日本社会のなかで、税理士と会計士を分ける必要は本当にあるのか?という疑問も持っています。税理士と会計士を一本化した制度をつくり、そこに夢のある会計プロフェッションという資格を確立して、国がバックアップする。そういう制度設計を考えていく必要があると思っています。
クライアントの発展を考えるスピリットは同じ
柳澤
今回の人財交流は私たちの小さな個別の話ですが、実は今の議論と全部つながるんです。何を勉強して、どんな力をつけるのか。監査なのか、コンサルティングなのか、どんなキャリアパスなのか。どうやって育てていくのか。そういう土壌を作っていくきっかけとして、この人財交流は非常に意義があると思っています。
須原
振り返ってみれば、先生にご相談してきたのはそういうことだったと思います。企業活動は、ミクロでやっていることとマーケットのマクロが必ず絡むものですから、そこで立ち止まって考えなくてはいけないときに、折に触れてご相談をしてきました。
柳澤
私が会計士協会の役員を務めていることのプラス面は、周りに対して単なる情報提供だけでなくマクロ的視野で伝えることができるということです。目には見えませんけれど、メンバーには感覚的に伝わっていると思っています。新創監査法人は大きくありませんけれど、常に理想とすべき監査法人とは?という課題を持っていて、それを経営に活かしたいと思っています。
エスネットワークスさんは監査法人という枠がないだけに、会計に軸足を置きながらどんどん幅広く展開されていますよね。
須原
社内でも同時多発的に横に広げ過ぎだと怒られています(笑)。
下村
手前味噌ですが、ここまでチャレンジしつづけている会社は、業界でも少ないと思っています。それが社風や文化、考え方に表れている気もしています。
柳澤
お二人の発想が豊かだから、きっとメンバーもその背中を見てクリエイティブなことをしたいと思うようになるのでしょうね。CFO SALONやCFO’s Eyeなどいろいろなことにチャレンジされて、それが働く人にとって面白みややりがいにつながっている。羨ましいですね。
下村
毎年、何かしら新規事業ができていますからね。
柳澤
失敗が許されると言ったら大変失礼ですが、失敗して学ぶことがあるわけじゃないですか。それが許される業態は、我々からするとすごく羨ましいです。監査は失敗が許されない。失敗したら資格取り消しですから、失敗から学ぶことはほとんどできません。つまりそれは、主体性や自律性が育ちにくいということです。
須原
そんな中でどんな風にモチベートされているのですか?
柳澤
大手ではない良さを生かして、経営者目線で監査をするということですね。いかに経営者に寄り添うのかということです。
須原
監査とコンサルティングはアプローチは違いますけれど、クライアントの発展を考えるという意味では同じですね。
柳澤
監査法人ではあるけれども、根っこはエスネットワークスさんと一緒だと思っています。本日はありがとうございました。

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