制度は与えられるものではなく、 自分たちで作るもの。
国際会計士連盟(IFAC)の倫理基準審議会は、「報酬に係る倫理規定改訂案」の公開草案を公表し、2020年12月に成案としました。これによると、『監査事務所の収入に対して大会社等からの報酬が占める割合が、5年連続で15%を超える場合には、監査人は強制辞任すること』が要求されています。この点については日本公認会計士協会(JICPA)は反対しましたが受け入れられず、今後、JICPAの倫理規則にも組み入れられ、日本の中小監査法人に多大な影響がでることとなります。
JICPAの中小事務所支援担当の副会長でもある柳澤統括代表社員は、この内容に強く反対する意見を、青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科が発行する『青山アカウンティング・レビュー』に寄稿しました。
寄稿の趣旨は以下の通りです。
・15%の数字に根拠はなく、監査規制に対する国際的な考え方が、質を問うよりも形式を問うものとなっている。
・形式主義は公認会計士としての使命感の欠如、希薄化を招き、監査品質はむしろ低下する。
・我が国にこのルールを適用すると、多くの中小監査事務所並びにその監査先である上場会社に影響が出る。
・若手の公認会計士が上場会社の監査を目指す新しい監査法人を作ることも、非常に難しくなる。
・監査の国際規制は、原則主義でその方向性を定め、ルールは各国の判断に委ねるべき。
IPOの監査難民の発生防止を図ろうと、日本公認会計士協会は大手・準大手・中小監査事務所・独立会計士の全ての公認会計士がその特性を活かして日本企業をサポートする体制を整えようとしています。日本のパブリックインタレストにかなった制度作りを行うためには、JICPAはたとえ国際基準で決まったことであっても声を上げていかなくてはならないと考えます。